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想いを繋ぐ紅玉 第7章


火月と有匡が高原家へと戻ると、家の中は何やら騒々しかった。

「有匡殿、丁度良い所へお戻りになられました!」
二人の姿を見た女中のていが、そう言って彼らの方へと駆け寄って来た。
「てい、何かあったのですか?」
「お嬢様、先程近くで火事が起き、大勢の怪我人が出たそうで・・その中に、美祢お嬢様が・・」
「姉様が?それは本当なの?」
「ええ、ですが・・」

ていは期待に満ちた目で自分を見つめる火月から目を逸らして俯いてしまった。

「美祢殿に何かあったのだな?」
「はい、有匡様。どうやら美祢お嬢様は火事が起きた所で炎に捲かれてしまわれたようでして・・」
隣に立っている火月が息を呑んだ。
「お姉様は無事なのですか?」
「それはまだわかっておりません。」
「てい、わたくしを診療所に連れて行きなさい!」
「火月お嬢様を診療所へお連れするなと、旦那様と若様が・・」
「何故です?わたくしはこの目で姉様の無事を確かめたいのです!」
「火月、落ち着け。てい殿、わたし達を診療所へと案内してくれるか?」
「は、はい・・」

ていと共に怪我人が運ばれた診療所へと二人が向かうと、その中には火傷を負った怪我人達が戸板の上で呻いていた。

「火月、来たのか。」
「兄上、姉様はどちらに?」
「美祢は奥の部屋にいる。だがお前は会わない方がいい。」
「何故です、姉様は無事なのでしょう?」

妹の問いに、静馬は首を横に振った。

「美祢は、火事が起きた時、妊婦を助けようとして炎に捲かれた。火消しが来た時、あいつはもう息絶えていたそうだ。」
「そんな・・」
「遺体の状態は惨いものでな、それが美祢だとわかったのは、この簪があいつの足元に転がっていたからだ。」
静馬はそう言うと、懐紙に包まれた簪を見せた。
それは火月が美祢の誕生祝いに贈った物だったが、美しかった銀細工の簪は、炭化して黒くなってしまっていた。
「兄上、姉様に会わせてください。」
「・・わかった。」

美祢は―美祢の遺体は、診療所の奥の部屋に安置されていた。

その姿は生前の美しいものとは違い、黒く炭化していた。
火月は姉の遺体を見ると顔を両手で覆って嗚咽した。

「てい、火月を家へ連れて帰ってくれ。」
「わかりました。さぁ、お嬢様・・」

ていが火月を連れて奥の部屋から出て行った後、有匡は美祢の遺体の前で合掌し、彼女の冥福を祈った。

部屋から出ようとした時、何かが美祢の足元で光ったような気がした。

有匡が美祢の足元を見ると、そこには真珠の鎖で作られたロザリオが転がっていた。

持ち主と共に炎に捲かれたそれは、鎖の部分は黒く炭化していたが、銀色の十字架の部分は無傷だった。
仏教徒である筈の美祢が、何故ロザリオを持っていたのか―そんな疑問を抱いた有匡は、彼女が自分の母と同じキリシタンだったのではないかという事に気づいた。

美祢の死と、母の失踪には何か関係があるのだろうか。

「有匡殿?」
「静馬殿、わたしに何か手伝えることはありますか?」
「怪我人の手当てをして頂けると助かります。聖心寺の方達が手伝いに来てくださっているのですが、人手が足りないもので・・」

もやもやとした思いを断ち切るかのように、有匡は持っていた襷を素早く掛けると、静馬と共に怪我人の手当てへと向かった。


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