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想いを繋ぐ紅玉 第3章



「先ほど、兄上から文が届いた。」
「叔父上から?」
京に住む父の兄にあたる叔父と、父・有仁(ありひと)が犬猿の仲である事を有匡は知っていた。
なので、有匡は父から叔父から文が届いた事を知り、嫌な予感がした。
そしてそれは、見事に的中した。
「その文には、急遽お前に上洛して欲しいと書かれてあった。」
「叔父上がわたしに何の用でしょうか?」
「さぁな。家督をお前に継がせたいのだろうよ。兄上の息子達は揃いも揃って出来が悪いと聞いているからな。」
有仁は溜息を吐きながらも、自分の甥にあたる従兄弟たちの事を酷評することは忘れなかった。
「わたしはあの家など継ぎたくありませんし、京へなど行きたくありません。もし叔父上の元へ行けば、二度と江戸には帰って来られぬような気がするのです。」
「策士として名高い兄上の事だ、お前を人質にしてわたしと引き離す算段をしているのかもしれん。」
「わたしから叔父上に上洛はせぬという旨の文を送ります。」
「そうしてくれると助かる。それよりも有匡、最近火月殿とは会っているのか?」
「ええ。火月との時間を作ろうとはしているのですが、最近仕事が忙しくてなかなか会えずにいます。」
「火月殿を大切にしてやれ、有匡。祝言はいつ挙げるつもりだ?」
「年明けまでには挙げるつもりでおります。」
「そうか。火月殿は幼い頃からお前を想っていたから、年明けまでとは言わず、すぐにでも祝言を挙げてやれ。」
「父上、戯言が過ぎます。」
「済まない、お前と話しているとつい昔の事を思い出してしまってな。」
そう言った有仁の目は、何処か遠くを―過ぎ去った日々の事を思い出しているかのようだった。
「母上の事を思い出していたのですか、父上?」
「ああ。」
有匡と艶夜の母、スウリヤと有仁は、周囲の反対を押し切って結婚したが、艶夜が三つになった頃、彼女は突然有匡達の前から消えてしまい、今は生きているのか死んでいるのかさえもわからない。
「スウリヤがお前達を捨てたのは、わたしが至らない所為だとずっと思っていたのだが・・何か彼女にも事情があったのだろう。」
「母上の話はもう止しましょう、父上。もう過ぎた事です。」
「そうだな。だがスウリヤの事を忘れようとしても忘れられんのだ。私の所為でスウリヤは私達の元から去っていってしまった。有匡、火月殿を大事にしろ。私のようにならぬように。」
「父上・・」
苦渋に満ちた表情を浮かべながらそう言った父の手を、有匡はそっと握った。
数日後、有匡の元に叔父からの文が再び届いた。
「何だと、スウリヤが京に居る?」
「はい。真偽は確かではありませんが、叔父が母とよく似た女を見たと。父上、これは父上を謀る為の罠かもしれません。」
「そうだな。」
その日の夜、有匡が自室で読書をしていると、廊下から慌ただしい足音が聞こえた。
「どうした、何かあったのか?」
「有匡様、先程京から使いが来て、有匡様にお会いしたいと申しております。」
「このような時間に訪ねて来るとは非常識な輩だ、追い返せ。」
「ですが、有匡様・・」
「何だ、まだ何かあるというのか?」
「その使いによれば、叔父上様がお倒れになられたと・・」
「それはまことか?」
女中に有匡は使いを部屋へと通すように言うと、父の部屋へと向かった。
「父上、有匡です。起きておられますか?」
「どうした?」
「先ほど京から使いが来て、その者によれば叔父上がお倒れになられたと・・」
「その者は何処に居る?」
「わたしの部屋に通すよう女中に命じました。」
「そうか、わたしも会おう。」


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