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女王達の輪舞曲<ロンド>*0*

ホテルの宴会場の扉を開けると、そこにはむっとした熱気と人々のざわめき、そして音楽が満ちていた。

長いドレスの裾を踏みつけて転ばないようにして歩きながら、彼女はゆっくりと目的の人物の元へと向かっていった。
その人物は、マスコミに囲まれながら隣に妻を侍らせ、彼らに向かって愛想笑いを浮かべていた。

―間違いない、彼だ。

彼女の姿を見た“彼”の顔から笑顔が消え、隣に立っていた“彼”の妻が夫の異変に気づき、険しい表情を浮かべながら彼女を睨みつけた。
「先生、お久しぶりです。」
「貴方、どうしてこんな所に居るの!」
ヒステリックな声を上げた“彼”の妻は、彼女を摘みだすよう警備員に命じた。
「わたしは正式に招待されてこちらに来ただけですわ。それを会った途端不審者扱いをなさるなんて、酷い方ですわね。」
彼女はクラッチバッグの中からパーティーの招待状を警備員と“彼”の妻に見せると、警備員はそそくさと自分の持ち場へと戻っていった。
「あなた、どうしてこの女をパーティーに招待したんです?」
「このパーティーに誰を招待するのかはわたしが決めた。こんな所で騒ぎを起こして、わたしに恥を掻かせる気か!」
“彼”はそう妻に怒鳴りつけると、秘書を引き連れてパーティー会場から出て行ってしまった。
「あなた、待って!」

“彼”の妻は去り際彼女を睨みつけ、慌てて夫の後を追った。

―何なの、一体?
―さぁ・・また先生の愛人の一人じゃないの?

チラチラとパーティーの招待客達が彼女を見ながらそんな事を囁き合っていると、彼女の元へ一人の青年がやって来た。
「お久しぶりですね、千歳さん。暫く会わない内にお綺麗になりましたね。」
「あら、貴方の方こそ暫く会わない内に随分と男前になったものね。」
彼女がそう言って青年に微笑むと、彼は苦笑しながら前髪を鬱陶しそうに掻き上げた。
「相変わらず千歳さんは人を褒めるのが上手いね。それにしても、さっきはあの二人と何を揉めていたんだい?」
「何も。ただパーティーの主催者に挨拶しようとしたら、不審者に決めつけられてここから追い出されそうになったから、招待状を彼らに見せただけよ。それで勝手に彼らが夫婦喧嘩を始めただけ。」
「そうか。千歳さん、パーティーで何をするつもりだったの?彼らの過去を暴露するつもりだったの?」
「まぁ、そんなところかしら。でも、それはまた別の機会にでもしようかしら。」
彼女―波瀬千歳(はぜちとせ)はそう言うと、先程ボーイから受け取ったシャンパンを一口啜った。
「それにしても盛況ね。まぁ、今を時めく政界の貴公子の顔見たさに来ている女性が沢山居るからだろうけれど。」
「相変わらず同性に対しては辛辣なんだね、千歳さんは。」
「女の敵は女っていうでしょう?女というのは、男の前と女の前とでは態度を変えるものなのよ。それじゃぁわたしはこれで失礼するわ。主催者と話せないんじゃここに来た意味がないし、今夜はゆっくりと休みたい気分なの。」
「じゃぁね、千歳さん。」
「またね、晴臣(はるおみ)さん。会えて嬉しかったわ。」
千歳は友人に投げキスをすると、そのままパーティー会場を後にした。
クロークで預かったコートを受け取り、彼女がそれを羽織ってホテルから出て行くと、入れ違いにタクシーから華やかな振袖姿の少女が降りて来た。
「晴孝さん、早く!」
「そんなに急がなくてもいいだろう、慌てん坊だなぁ。」
そう恋人に向かって言いながらタクシーから降りて来た一人の青年と、千歳は目が合った。

「美晴ちゃん、美晴ちゃんなのか?」


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